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本のレビュー「事例で学ぶブランディング ランドーのデザイン戦略大公開」 著:ランドーアソシエイツ

イントロダクション

こんにちは!プロダクトデザイナーのTANUKIです。


このサイトは、キャリアアップに必要なスキル向上に注目しています。本を読むことは、多くの面で有益であり、時短になります!ここでは、本選びのご参考に紹介したいと思います。

今日の本はこちら↓

今回は、「事例で学ぶブランディング ランドーのデザイン戦略大公開」 著:ランドーアソシエイツです。1941年設立の[Walter Lndor & Associates]は2024年現在で83年の歴史を持つブランディングコンサルです。1972年に開設された東京オフィスも約半世紀の実績の中で外資系でありながら日本でもたくさんの実績があることで有名です。手がけたロゴデザインを見ると「小田急」「イオン」「VISA」「JCB」「NEC」「JP(郵政)」「meiji」など錚々たる企業が並んでいます。生活していてランドーが手がけたロゴデザインを見ない日は無いほどの実績です。同社のノウハウが学べるなら本代や読書時間は安いものです。

学びのエッセンス

一言で言うと「ブランドの再構築に必要なこと」を教えてくれる本です。固定的な1事例を語る教則本ではなく、複数の事例でブランド開発のプロセスから始まり、事例によって異なる要因を加味した対応が掲載されており、ランドーのブランディング手法を学ぶ構成になっています。どの様な学びがあるのか見ていきましょう。

見逃せないポイント

「ブランディングの工程が見える」

まず初めに、架空の会社を例にブランディング開発プロセスが紹介されています。

<ブランディング開発プロセス>

  • 1.基礎調査
  • 2.ブランドコンセプト開発
  • 3.ネーミング開発
  • 4.VI開発
  • 5.ブランドアクティベーション
  • 6.ブランドエンゲージメント

詳しいプロセスは本書を実際に読んで頂くとして、概要がわかる範囲に絞って御紹介します。プロセスの全体感は調査内容からコンセプトを検討して、ネーミングやロゴマーク、ブランドに関わるビジュアルの資産を作り、ネガティブな意味合いが無いか/商標での権利侵害の可能性についてフォローされています。そして最後にブランドを社内外に浸透させるところまで伴走していることが見て取れます。同社がアフターケアまで万全であることがわかります。

各工程をもう少し詳しく見て何が学べるか見てみたいと思います。

1.基礎調査では数値的な調査や歴史的な事実だけに捉われず、定性調査にも重きが置かれていることが印象的です。特に経営者側へのインタビューや社員とのワークショップを通して内部のマインドを大切にしている点がコンサル側のお仕着せにならないポイントだとわかります。

2.ブランドコンセプト開発ではブランドコンセプトを構成する次の三要素が大事であると語られています。

  • ナラティブ:ブランドのストーリーを語る文章
  • ブランドアイデア:ブランドの考え方を示すフレーズ
  • ビリーフ:ブランドアイデアを示唆するキーワード

本書では架空の会社の「ナラティブ(ブランドストーリー)」の文章例が掲載されているので具体性を持って理解することができます。「ナラティブ」では創業の想い、市場環境、ありたい姿が包含されてます。そして次の「ブランドアイデア」ではキャッチコピーの様に一言で言い表せる文言がありストーリーを集約した一言になっています。「ビリーフ」では価値観を表すキーワードが3つ挙げられています。

ブランドコンセプトを構成する「ナラティブ(ブランドストーリー)」、「ブランドのアイデア」、「ビリーフ」に明確な違いを持たせた3案からブランドが持つ信念を反映させた異なる3つのコンセプトを作り顧客とのタッチポイントを比較できる様にする「プロトタイピング(試作)」が行われます。この手法では、具体的なビジュアルや広告としてどのように表現されるか、店頭での展開はどう見えるかなどを実際に試作し、これらを視覚的に比較します。私が専門とする工業デザインの分野では、いくつかの異なる方向性を試作品として作るのは一般的な方法ですが、ブランディングにおいても同様のアプローチが取られている点が分かります。試作を通じて具体的なビジュアルがイメージできると、デザイナーでない人たちも評価やフィードバックを提供しやすくなります。

3.ネーミング開発では、まず既に作成されたコンセプトからネーミングのアイデアを見つけ出します。この本では、開発の基準として「事業の内容」「企業の態度」「顧客に提供する価値」の3つの視点を採用しています。これらの基準に基づいて複数のネーミング案を評価し、最終的なネーミングを決定するプロセスを紹介しています。

4.VI開発はロゴデザインに加え、広告イメージ、名刺のデザインなどブランドを物語る場面で創出されるクリエイティブの仮説をいくつか立てて比較検証するフェーズになります、こちらも本書ではビジュアルとして掲載されていますのでどの様な距離感で比較が行われるのかが分かります。

5.ブランドアクティベーションではブランドを1つの人格として捉え、どの様な振る舞いで、どの様な語りかけをし、どの様な夢を持っているかを設定し実際の運用で使いやすくする工程が設けられています。ブランドローンチ後に持続的に発展継続する施策があります。

6.ブランドエンゲージメントでは初めて新しいブランドを発表する時に一度打ち出すだけでなく、何度もすべてのタイミングで打ち出すことが有効と解かれています。そして全社員に自分事化させ、社員自ら体現していくことがブランドのエンゲージメントには大切であることがわかります。依頼企業の社員の中からアンバサダーを登用し、発信体現することでブランドを自立自走させる仕組みも紹介されています。

「豊富な国内海外事例」

第二章の「事例で学ぶ」では合計7つのプロジェクトの個々の歴史背景や事業に合わせたブランド開発が紹介されています。なかでも印象的なのは「日経BP」です。同社はデジタル化に合わせ多様なメディアを扱い、環境変化に機敏に反応する必要が出てきました。しかし、従来から在籍する社員が変化を敬遠しがちな点が課題として紹介されています。その解決策として社内外に明確な姿勢を示し浸透するためにスローガンを設定することを選択しています。スローガンは「その先を見る。その先を解く。」とあります。何か私には聞き覚えのあるフレーズです、どこかで一般消費者の私の耳にも入っていたのかもしれません。記者や編集のプロが集う同社では昔から変わらず持っている専門性を活かしながら新しい環境にも適切に対応していけること、情報を正しく伝えるだけでなくさらに読者や顧客に解を与えるまで支援する意味合いが込められています。正確には本書を手に取っていただければと思いますが、元々の社員の専門性を活かし、個々の能力をチームの力に変えて最大化するすることが設計されており、ブランド開発がビジネスに実益として寄与することが理解できます。

また各プロジェクトの担当デザイナーなどがコメントを寄せ、推進する中での気づきなどを教えてくれます。ここに各社の背景が違うことから実践するにあたってはチェックする項目も異なるため、「実践:チェック項目」として確認すべきことが端的に記載されています。まさに実用書です。

他にも、国内、海外の事例として概要紹介が掲載されており身近な企業のブランディングの事例で中身が入りやすくなっています。「JP」「小田急「ENEOS」「キッコーマン」「シトロエン」「ボルヴィック」など13企業の取り組みが掲載されています。

学びの振り返り

「事例で学ぶブランディング ランドーのデザイン戦略大公開」 は読了まで2時間程度でした。デザインやブランディングに興味のある人なら時間を気にせず読み込める内容でした。そして紹介されている手法は再現性も高く、もちろんランドーの方が実践するのとは異なるでしょうが、自分の業務に当てはめて考えてみることで身になる内容だと感じました。デザイナーはもちろんブランドホルダー企業にお勤めの方にもお勧めします。

本を読むことは、著者が時間を掛けて得たものを短時間でインプットできる大変な有効な時短です。キャリアアップやライフハックに必ず効きます。もっと時短したい、作業しながら本を読みたい場合はオーディブルで聴くのもひとつかもしれません↓