Book

本のレビュー「しぶちん」著:山崎豊子

イントロダクション

こんにちは!プロダクトデザイナーのTANUKIです。


このサイトは、会社員デザイナーのキャリアアップのために、転職や昇進に必要なスキル向上に注目しています。本を読むことは、専門知識以外にも多くの面で有益であり、読書の継続を推奨します!ここでは、要約ではなく、どのように役立つかを中心に本を紹介したいと思います。

本の概要

今回は、しぶちん著:山崎豊子 を読んでみました。発行されたのは1959年で山崎豊子氏の初めての短編集とのこと。「沈まぬ太陽」「不毛地帯」「白い巨塔」など綿密な取材から書き上げられた重厚な長編小説が有名で私も好んで読んでいましたが、この短編の存在は知りませんでした。長編小説が人間ドラマに加えて企業内での政治、労働組合などビジネスマンの知識補強にもなる印象がある内容が多いのですが、短編だとそういった点が少ないのではと思いつつ読んでみたところ、得るものがありました。

ちなみに「沈まぬ太陽」は渡辺謙さん、「白い巨塔」「不毛地帯」では唐沢寿明さんが主演で大変重厚なストーリーが映像化されておりドラマも原作に負けない面白さでした。読んだ方にもお勧めです。

しぶちんに話を戻しまして、何作か短編が入っていますが2つ取り上げて何を得られたのか共有いたします。

「船場狂い」

「船場(せんば)」という言葉は初めてこの本で知りましたが、概ね本短編集では大阪の承認の話が多いことからこの「船場狂い」という話以外にも時折出てくる地名になっています。船場とは大阪城の前にある川で仕切られた矩形の島のことで、富商が集まる商いの中心地とされていた場所です。その船場では特殊なしきたりや子供たちも船場以外の子供と明確に呼び方まで区別されて特別な場所されていました。船場の外に産まれた主人公の久女(くめ)は幼少期より憧れ続け、船場に嫁ごうと考えるも船場の外同士での結婚することになり叶わず、商才を発揮して店を繁盛させ船場の外に出店しながらも店の構えや、使用人の呼び方、衣替えの様式など船場風にして船場に近づこうとする模様が綴られます。やがて子供達が嫁ぐ年になると仕度金を持たせて、落魄れた船場の商店に嫁がせ自分も船場に移り住むという執念の物語です。やがて空襲で船場は焼け野原となり、老舗のしきたりを守る店は無くなります。かつての船場とは異なる会社が立ち並び、船場への羨望や特別感を世の中が忘れていく中でも久女の店だけが「しきたり」を守り続けるのです。

皆さんはどうでしょうか?ずっと固執していることはないでしょうか?私は海外に行きたいという想いをどこかで抱いています。しかし、業務上はそういったことが望めない状況にありながらどこか20代の頃からどこかに海外移住に羨望の想いがあります。きっと若い頃に行って仕舞えばそれで想いは完了していたのではと思うのですが、どこか心の奥に張り付いている様な気がします。英語を勉強しているのも、キャリアアップというだけでなくそれが要因の様にも思います。この物語の久女ほど躍起にはなっていないことに気付かされ自分への叱咤をもらった様に感じます。一方で「船場狂い」は船場がなくなった後もこだわり続ける主人公への陰口であることから窺い知れますが、世の中としては意味がなくなる様なことに固執している愚かさも、この物語では語られています。自分の追い求めていることは実はあまり実益のないことでは無いかと振り返ることと、人になんと言われようと実行する大切さを教えてくれる物語でした。

「しぶちん」

ケチン坊のことを大阪弁で「しぶちん」というそうです。この物語は主人公の山田万次郎が材木問屋で丁稚をするところから始まります。職場の先輩たちの使いでタバコを買いに行かされればまとめ買いで安く仕入れ駄賃をせしめることから始まり、材木を川を移動させて納品される時には納品数を誤魔化されない様に問屋の丁稚であるにも関わらず木材をかついで川を行き来し目を光らせ損をしない。極め付けは丈夫さで同僚の女中を選び、子供が産まれるまで働くことを前提に結婚。周囲が憐れむほど質素に済ませ式の翌日に晴れ着でどこかに連れてってほしいという妻に式の翌日もお勤めだと叱りつける。節約節約の繰り返しでお金をため続ける主人公の話。

読み進めるとそこまでしなくてもと思うほどの内容が子育てや生活の節々で語られていくが、徐々に「ここまでしないとお金というのは貯まらないものなのかなぁ」と尊敬の念を抱くのは私だけでは無いと思います。最後にある機会で山田万次郎は大盤振る舞いをするのですが、その後すぐに淡々と「しぶちん」を続けるのです。

この話から得たものは「徹底する」強さがことを成すということ。一方周囲の人からは蔑まれたり、身内からも羞しく思われて一見人生に豊かさが得られない様に感じられます。そういった点では反面教師の様でもありますが、主人公は大盤振る舞いの後にも「明日からもしぶちんで無いと銭は貯まらない」ことを示しています。本人は幸せなのです。自分はどっちを目指すのかと考えさせられる物語でした。

具体的に何がわかるのか?

こだわって、諦めない人がコトを成す。
他人に陰口を言われても本人が成し遂げれば満足かは、人それぞれの価値観が問われる。

ひとこと感想

見習うべきことが多い

まとめと次の読書に向けて

しぶちんは読了まで3時間弱でした。
山崎豊子さんの作品は社会人にも節々で教訓が得られる作品が多いので、皆様も一度手に取ってご覧ください。引き続き、読んでいない作品があったら手に取ってしまう作家さんです。案外、会社などで年配の方と話す時に「山崎豊子ファン」に出会って思わぬところで話が盛り上がるという効能もありますので読んで損はないと思います。